「ステーシー」
(STACY)
(2001年 日本 80分)
独特な世界観の中で描かれる愛のゾンビ映画。
大槻ケンジ原作ゾンビ小説の映画化。
原作は作者独特の世界観で描かれており、
どこか浮世離れしています。
思春期の少女達が突然死してゾンビ化、
という変な現象が世界同時発生。
ゾンビ化を間近に控えた少女と
中年男性のつかの間の心のふれ合いを軸に、
ゾンビ処理部隊の男達がそれぞれ抱える苦悩などが、
ゾンビ現象真っ只中とは思えない日常的な風景の中で描かれます。
スプラッター・メイクがとても楽しい作品。
ゾンビ少女は全身を徹底的に分断しなけきゃ死にません。
ってことで処理部隊の銃撃による破壊や、
イカれた博士(筒井康隆!)による解剖実験など、
特殊メイクによる人体破壊が一杯。
更に少女ゾンビ達による血みどろの食人描写も、
手を抜くこと無くとことん見せてくれます。
やっぱり生の特殊効果は良いですねえ。
CGとは存在感が違う気がします。
ダミーはとてもよく出来てますが、
それでも作り物に見えてしまう瞬間はあります。
でもその作り物感も魅力的です。
よく出来た作り物=アートだからです。
でもって加藤夏希が可愛い!
現在は成長して美人顔が完成してしまった感がありますが、
この作品の頃はまだあどけなさを残していて絶妙な美しさ。
あとゾンビ処理部隊の隊長さんのセリフが素晴らしく棒読み!
けっこう良い役どころなのに。
「ゾンビ自衛隊」にも隊長の役で出演していてやはり棒読み。
裏切りません。
この方一体何者なんでしょう?
体格の良さから察するに格闘家?
世の中とんでもない状況。
なのに劇中描かれる日常はどこかのんびり。
映像的に面白く、
夏希ちゃんも可愛く楽しめます。
そしてクライマックス、
実験用のゾンビが牢から溢れ出て、
処理部隊の基地がパニックになるあたりから、
ちょっと妙な感じに・・・・・
前半から見え隠れしていた、作品の格となる、
「愛と赦し」というテーマが前面に押し出されて来ます。
イカれた博士は、
食人の根底にあるのが愛情だと悟り、
感動にうち震えながら至福の表情で少女達に襲われます。
他、
愛ゆえにゾンビ少女をかばう青年。
少女の言葉に過去の犯罪を赦され涙する男。
感傷的に盛り上がりはじめ、
登場人物たちみんなで愛の賛歌でも歌い出しそうな展開に。
全編この上なく血みどろで映像的にとても楽しい作品ですが、
最後はセンチメンタリズムが大爆発。
愛というテーマは盛大に歌い上げられるとちょっと気恥ずかしいかな。
愛情を持ってゾンビ化少女を「再殺」する
尾美としのりの抑えた演技だけでも十分伝わりました。
まあ、これは趣味の問題。
結果、他に類を見ない独創的なゾンビ映画に仕上がってますから。
まあ、そんなこんなで、とても切ないゾンビ映画でした。
ところで、ゾンビ化少女を殺すことを意味する「再殺」という言葉。
よく考えて見ると1回目は病死で殺されて死ぬわけじゃないから、
「初殺」ですね。