ゾンビ映画製作回想録 第11回 | 地獄のゾンビ劇場 ~ZOMBIE THEATER~

地獄のゾンビ劇場 ~ZOMBIE THEATER~

「地獄の血みどろマッスルビルダー」監督・深沢真一によるホラー映画雑学&雑談ブログ!

「立場逆転!」

 

もうずいぶん昔のある夏に思い立った、

大作スプラッター・ゾンビ映画の企画。

 

ストーリーも確定できぬまま

半年近くも難航していたというのに、

翌年の元日、

突如ゾンビ映画の神様から啓示を受け、

たった2日でシナリオの初稿が完成した。

 

あまりの完璧な出来映えに、

私は実家の自室の中、一人大笑いすると、

その素晴らしい第一稿を原稿用紙に清書し、

コピーをとって意気揚揚とポストへ投函した。

制作協力者の田中君(仮名)に読ませるためである。

 

懸案だった撮影日程や予算の問題も、

私が勤め先を退職し、預金を注ぎ込むことでクリア。

田中君は泣いて喜ぶだろう、

と思っていたのだが・・・・・・・・・・

 

しばらくして、田中君から一通の書簡が届いた。

以下は、実際に届いた手紙の冒頭部分の抜粋。

 

「前略 今、シナリオを読み終えたところだ。

まだ細かいことは言えないが、率直な感想を述べさせてもらおう。

はっきり言って俺は怖じ気づいている。

このシナリオを最良の形で具現化するのは、

とてつもなく難しいと思う。

実現出来る、出来ないは抜きにして

とにかく好きに書いてくれ、と言った俺が言うことではないが・・・・・」

 

この後、便箋四枚に渡り、

頼むから作品の規模を縮小してちょうだい、

と必死の説得が続いていた。

 

「一つ一つのシークエンスが長い。

簡略化しないと、撮影出来なかった、完成しなかった、

ということになりかねない。

撮り終えることが出来るテイク量に限定すべき。

これだけは入れたい、というもの以外、

余計な装飾を削り取ろう」

 

な、なんで?

言ってることが180度変わってるぞ!

 

これまで、作品規模を確実に撮れる範囲内に縮小すべき、

と強く主張し続けてきたのは、私の方だった。

 

対する田中君の意見は、

とにかく大作でないと撮る意味が無い、

ということで一貫していたはず。

 

どうやら私が突然企画を拡大したことに

戸惑いを覚えているようだった。

 

コンビというのは面白い。

一方が自由奔放に振る舞おうとすると、

一方が押さえにかかる。

無意識にバランスをとろうとするようである。

 

だが、このときの私には「出来る」という根拠と確信があった。

 

「俺も一生に一本くらい、

本当に、心から納得できる作品を撮りたいのだ。

会社を辞めて必要なだけ時間を作る覚悟だし、

予算も十分取ってあるから、

安心して参加してくれればいいんだよ。

ポジティブでいこう。

失敗したって殺されるわけじゃない。

大丈夫。俺達なら必ずいいものが撮れるよ」

 

私は彼にそう手紙で伝えた。

 

すると驚くほどの速さで田中君から返事が届いた。

もちろんパソコンや携帯が普及する以前の話。

また、書簡である。

 

「今回もらった手紙は、

君のこの作品に対する意気込みが

痛いほどに伝わる名調子であった。

こちらも一発気合を入れねばと思わずにはいられなかった。

その気持ちの表れとして、シナリオをワープロ打ちして同封した。

これは書き直しの際の君の作業を少しでも楽にするためだ」

 

そうかそうか、俺の気持ちを判ってくれたのか。

ありがとう、田中君。

やはり持つべきものは友達だよ。

これからもよろしくたの・・・・・

 

ん?

 

手紙には続きがあった。

便箋四枚に渡り、いつになく細かい字でギッシリと・・・・・・・・・・。

 

 

 


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